EMIシールド
データ転送速度の向上とデバイスの小型化に伴い、高速信号同士が近接して配置されるようになり、信号干渉のリスクが高まります。高性能な基板対基板コネクタにおけるシールドの目的は、周辺部品から発生する電磁波がコネクタ内部の信号に干渉するのを防ぎ、同時にコネクタ内部の信号から生じる電磁波が外部に放射され近接する回路に影響を与えないようにすることです。また集積回路内のタイミング制御やスイッチング動作によって発生するEMIノイズに起因する現象である電磁両立性(EMC)も、システム内部での信号干渉の要因となります。
NOVASTACK®シリーズに採用されているZenShield®は、コネクタの360°全方位を金属製のシールドが囲うEMC/EMIシールド構造であり、プラグ・レセプタクルの接点部だけでなく、SMT実装部からの電磁ノイズの放射も遮蔽します。さらに、嵌合時はプラグとレセプタクルの金属シールド同士が複数点でグランド接続され、基板側にも適切に接地されます。そのため、金属シールド内の電流のリターンパスを十分に確保することができます。これはシールド自体からの電磁ノイズ放射を抑制する効果があります。Zenshield®により、コネクタは高周波送信機やアンテナの近くにも配置可能になります。図1は、金属シールドを持たない汎用コネクタと、ZenShield®による360度EMIシールドを備えたI-PEXコネクタのEMI放射パターンを比較したものです。金属シールドのないコネクタは、コネクタやFPC、基板上の配線から放射が見られますが、ZenShield®コネクタやシールドFPC、コプレーナ導波路レイアウトを採用することで、EMI放射を効果的に抑制できます。

右: 金属シールド付きのI-PEXコネクタ

シールドのないコネクタやPFCから放射されるノイズが隣接する電気信号に干渉します。これに対し、シールド付きコネクタやシールドFPC、コプレーナ導波路を採用することで、隣接する電気信号に対するノイズを効果的に低減できます。図2は、10 GHzにおけるシールド付きコネクタとシールド無しコネクタの電磁界分布ですが、シールド付きコネクタの方がノイズの抑制に効果的であることを確認できます。
E-Field | H-Field | ||
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シールドあり | ![]() 10.0 GHz |
![]() 10.0 GHz |
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シールド無し | ![]() |
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図2. シールド付きおよびシールドなしコネクタの未使用チャネルにおける電気場と磁気場の結合
5Gスマートフォンのような最新の機器には、5G、LTE、Wi-Fi、GPS、Bluetoothといった複数のアンテナが近接して配置されています。各モジュールや基板がFPCを介して、もしくは基板間を直接コネクタを使って接続されるため、小型で高性能なシールド付きコネクタの重要性が高まっています。高速信号はFPCの配線からもノイズの影響を受けやすく、NOVASTACK®はシールド付きFPCとの組み合わせでも使用可能です。EMIやクロストークノイズは周波数が高くなるほど増加するため、製品設計段階でEMI対策を考慮することが重要です。従来のノイズ対策は、高周波・小型化された最新の機器では十分な効果を発揮しません。NOVASTACK®は、小型でコストメリットがあり、EMIシールドのついた高性能な基板対基板コネクタであり、最新の高速信号伝送に最適です。
記事:5G対応機器設計のコネクタソリューションにおいて考慮すべき点
記事:ZenShield®: 高性能EMC対策コネクタ
目次
- 1. 最大動作周波数とデータレートは?
- 2. 基板対基板コネクタにおけるシールドの重要性とは?NOVASTACK®シリーズに搭載されているZenShield®とは?
- 3. なぜ基板対基板コネクタにおいて高密度設計が求められるのでしょうか?高密度設計は信号品質にどのような影響を与えるのでしょうか?
- 4. 高速信号伝送と並行して電源供給を基板対基板コネクタで行うことは可能ですか?定格電流はどの程度ですか?
- 5. 異なる嵌合高さの基板対基板コネクタを使用することには、どのような利点がありますか?
- 6. NOVASTACK®シリーズが対応する主要な伝送規格およびプロトコル信号は何ですか?
- 7. NOVASTACK®にはどのようなアクセサリが用意されていますか?
- 8. 基板対基板コネクタのカスタム対応はできますか?