ハイデータレート
データレートは、小型かつ高性能な電子機器において重要な役割を果たします。複数のプリント基板を高密度に積層した小型電子機器では、最適な性能を得るために基板間を行き来する信号のデータレートを高く維持することが重要です。データレートは通常、最大動作周波数によって決まり、Gbps単位で表されます。NOVASTACK®シリーズは最大20GHzの周波数に対応し、PAM4信号方式を用いることで最大80 Gbpsのデータレートを伝送可能です。
NOVASTACK®シリーズは、USB、MIPI、LVDS、eDP、Thunderbolt、PCIeなどの一般的なプロトコルに対応しています。
高解像度ディスプレイや小型サーバーやPCの処理速度の向上、医療用画像機器の解像度向上、高度な3Dグラフィックスを使用するAR/VR/MR機器の進化により、基板を伝送するデータレートはますます高速化しています。20 Gbps以上の高速信号では、信号品質の維持が難しくなり、基板対基板コネクタの性能がシステム全体の性能に大きく影響します。インサーションロス、VSWR、近端・遠端クロストークは、信号品質を評価する重要な指標です。特に、インサーションロスは接点内で高周波信号が熱として失われる量であり、コンタクトの形状やコネクタ嵌合時の信号経路の長さによって左右されます。信号経路が長いほど損失が増え、実効データレートが低下します。図1では、NOVASTACK®シリーズの構造と信号径路を示しています。

リターンロスは、コネクタの送信側または受信側で発生する反射によって生じる信号損失のことです。これらの反射は、コネクタ内部の接点におけるインピーダンス不整合によって引き起こされます。インサーションロスと同様に、リターンロスは高周波になるほど増加する傾向があり、コネクタの設計により抑制することができます。
コネクタのコンタクトにおけるインピーダンス整合は、伝送信号の品質を保証するために不可欠です。インピーダンス不整合があると、送受信側で反射が発生し、チャネル内に定在波(VSWR)が形成され、信号損失が増加します。高周波領域では、これがアイパターンの閉塞を引き起こし、ビットエラーレート(BER)の上昇とデータ損失につながります。したがって、インピーダンスが整合された高性能・低損失の基板対基板コネクタの選定が非常に重要となります。


高速信号伝送においては、コネクタ内部の信号間の相互結合により、隣接するコンタクトに不要なノイズがのることがあります。この現象は「クロストーク」と呼ばれ、dB単位で評価されます。送信側近傍で発生するものは「NEXT(Near End Crosstalk)」、受信側遠端で発生するものは「FEXT(Far End Crosstalk)」と定義されます(図3参照)。クロストークは周波数の上昇に伴い増加する傾向があり、高周波設計では重要な検討事項となります。クロストークはdB単位の負の値で評価され、数値が大きいほどノイズが少ないことを意味します。たとえば、10 GHzでのNEXTが-55 dBであれば、20 GHzでの-50 dBよりもクロストーク性能が優れていることを表します(図3参照)。
クロストークの発生は、コネクタ内の高速信号とGNDの配置に影響されます。下のグラフに示されたクロストークデータは、グラフの下のピンアサイン図に基づいており、差動信号間にGNDを配置することで、ノイズ干渉が抑制されています。また、図3にはNOVASTACK® 35-HDHのリターンロスとインサーションロスのデータも示しています。

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レセプタクル |
I-PEXは、NOVASTACK®シリーズコネクタのソケットとプラグの両方に対応したシグナルインテグリティテストボードを提供しています。
SIツール資料
目次
- 1. 最大動作周波数とデータレートは?
- 2. 基板対基板コネクタにおけるシールドの重要性とは?NOVASTACK®シリーズに搭載されているZenShield®とは?
- 3. なぜ基板対基板コネクタにおいて高密度設計が求められるのでしょうか?高密度設計は信号品質にどのような影響を与えるのでしょうか?
- 4. 高速信号伝送と並行して電源供給を基板対基板コネクタで行うことは可能ですか?定格電流はどの程度ですか?
- 5. 異なる嵌合高さの基板対基板コネクタを使用することには、どのような利点がありますか?
- 6. NOVASTACK®シリーズが対応する主要な伝送規格およびプロトコル信号は何ですか?
- 7. NOVASTACK®にはどのようなアクセサリが用意されていますか?
- 8. 基板対基板コネクタのカスタム対応はできますか?