現在の定格と電源ピン

電子機器の小型化が進む中で、内部のプリント基板にはこれまで以上に多くの部品が密集して配置されるようになっています。高性能・小型化が進む電子機器では、基板間での高電流伝送が求められており、信号品質を損なわずに電力供給を行うことが設計上の重要課題となっています。NOVASTACK®シリーズは、信号ピンと電源ピンをそれぞれ搭載したコネクタを提供しており、高電流対応コネクタでは1ピンあたり最大6Aの電流供給が可能です。ホールドダウンやパワーピン、高電流対応ピンを備えることで、電流専用コネクタの省略が可能となり、基板スペースの効率化と熱設計の最適化に貢献します。

NOVASTACK® 35-Pは高速信号と電源信号の両方を伝送可能なハイブリッドコネクタです。低背でシールド無し、電源ピンあたり最大2 Aまで伝送可能です。NOVASTACK® 35-PHもシールド無しのハイブリッドコネクタですが、より高背で、電源ピンあたり最大3 Aまで伝送できます。シールド付きのハイブリッドコネクタとしては、NOVASTACK® 35-HDPがあります。低背で、各電源ピンあたりの対応電流値は最大4.5 Aです。さらに、NOVASTACK®-Bは高電流対応基板対基板コネクタで、電源ピンあたり最大6 Aまで対応しますが、芯数バリエーションは他のハイブリッドコネクタに比べて限られています。

NOVASTACK®に搭載された金属製のホールドダウンは電源ピンとして機能します。同時にこれらのホールドダウンは嵌合時の保持力を高め、プラグとレセプタクルの半嵌合を防止します。更にプラグとレセプタクルを嵌合する際のコネクタへのダメージを低減します。

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プラグ内の金属強化接点ピン
金属製プラグ 補強材 (固定用)
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レセプタクル内の金属強化コンタクトピン
受口金属補強材(固定用)

 

               
金属製固定具を使用して、接続プロセス中のコネクタの損傷を軽減
1. プラグ固定具  2. レセプタクル固定具
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高信頼性接続用の保持ピン

 

NOVASTACK®シリーズの電源ピンには、銅・ニッケル・シリコンを主成分とする高性能なコルソン合金が採用されています。コルソン合金は一般的な銅や銅合金と比較して、強度、導電性、熱伝導性、そして曲げ加工性に優れており、高電流供給用途に適しています。高い耐熱性を持つコルソン合金は、持続的に高電流を流しても温度上昇を抑え、発熱を防ぎます。グラフ1にCorson合金と従来の銅合金との温度上昇比較を示しています。またCorson合金を使用したコンタクトは、高温でも軟化せず変形が起こりにくくなっています。グラフ2に示すように、NOVASTACK®-Bの4つの電源ピンでは、入力電流12 A、リターン電流を合わせたトータル電流24 Aを伝送した際も、温度上昇は27.1 °Cに抑えられています。

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グラフ1. コルソン合金と銅基合金における温度上昇と電流の流れの関係
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グラフ2. NOVASTACK®-B コネクタにおける温度上昇と電流の流れの関係

 Power : I =7.0~12.0 A  Signal : 1.0 A

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NOVASTACK®-B コネクタの入力電流と総電流

 

コルソン合金は、リン青銅合金(12~25%IACS)に比べて一般的に電気伝導率が高い(30~50%IACS)ことが、以下のグラフ2に示す通りです。IACSは「国際焼鈍銅標準」の略称です。

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図2. コルソン合金とリン青銅の電気伝導率比較

 

電気伝導率に高いコルソン銅合金を使用したコンタクトは高電流伝送に適しており、高温や高湿度な環境下、嵌合作業が複数回行われ、振動や衝撃が発生する過酷な環境においても安定した性能を保ちます。残留応力とは、外部から力が加わっていない状態でも金属内部に残る応力のことです。これは合金の重要な特性であり、コンタクトの形状や機能を安定して保つために欠かせません。コルソン銅合金を使用したコネクタでは、製造段階で残留応力を適切に管理することで、耐久性を高め、コンタクト形状を維持し、電気的・機械的な性能を安定させています。圧縮応力と引張応力のバランスを最適化することで、コルソン合金は高温環境でもコンタクトの形状と性能を維持します。グラフ3では、他の銅材に比べてコルソン銅合金は時間が経過しても残留応力を維持することを示しており、強度・曲げ加工性・導電性のバランスに優れています。

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図3. コルソン合金およびその他の合金 - 残留応力対照射時間

 

 

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