コウモリの研究で活用されるI-PEXの高性能小型コネクタ

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未来のナビゲーション技術に繋がる研究

状況


Bats in flight

非常に機知に富んだ研究チームと高度な技術により、自然界の謎がまた一つ解明されようとしています。植物学教授の娘として生まれたインディアナ州ノートルダムにあるセントメアリーズ大学の生物学部助教授Laura Kloepper博士は、生物模倣(バイオミミクリー:生物の仕組みから学んだことを技術開発に活かすこと。)に長い間関心を持っていました。特に彼女はコウモリやイルカが集団で生物学的ソナーまたはエコーロケーションを行う能力をどのように可能にしているのかを解明しようとしています。

コウモリは大群で飛行する場合がありますが、科学的には同時に多数のソナーを使用する場合、互いの音波が干渉しソナーシステムを「妨害」してしまうと考えられています。この分野の理解は、自動運転車のナビゲーション、悪天候時の車両ナビゲーション、視力障害者向けのセルフナビゲーション、ソナーやレーダーなどのさまざまな軍事用途など、幅広い分野に役立つ技術の進歩につながる可能性があります。

Saint Mary's student
コウモリの大群に向けて鷹を飛ばす準備をする
セントメアリーズ大学の学生

しかし、コウモリがどのようにしてこの様な能力を発揮しながら集団で飛行しているのか理解するためには、コウモリの大群の中から正確な音声と映像記録を取得し分析する必要がありました。密度の低いコウモリの群れ飛行を記録する場合ドローンを使用することもできますが、密度の高い群れの場合、コウモリに危険を及ぼすことなくデータを取得するためにはより創造的な別のアプローチが必要でした。

オックスフォードの生物学者であるグレアムテイラーとの偶然の出会いの後、Googleが主催するScience Foo Campで、Kloepper博士は、日没時に洞窟から一斉に飛び出すコウモリの大群と一緒に記録装置を装着した訓練された鷹を飛ばして記録すというユニークな解決策を提案しました。 そしてノートルダム大学電気工学科のAssociate Chair兼DirectorであるBob Stevenson博士、ニューメキシコファルコナーズアソシエーションのPresidentであるPaul Domski、およびセントメアリーの学生の支援を受けて、装置やフィールド調査を計画しました。

コウモリの群れとともに訓練された鷹を完璧なタイミングで飛行させる複雑さに加えて、別の主要な課題は、鷹が装備する装置の総重量が鷹の総体重の10%を超えないようにする必要がありました。

 


問題解決


CABLINE-UA II
I-PEX® CABLINE®-UA II 細線同軸コネクタ

チームは、超音波録音マイクと高解像度ビデオイメージング機器の検討した結果、パナソニック社製のHX-A5004Kウェアラブルアクションカメラを適切な候補として絞りました。しかしチームはカメラの重量を大幅に削減するため、ユニットを分解し、改造する必要がありました。カメラに使用されていたI-PEXコネクタケーブルをカスタムで調整する必要があったため、I-PEXコネクタの地域セールスマネージャーMark Ernstbergerに連絡をとりました。こうして連絡を受けたMarkとI-PEXは彼らがより軽く、より効果的な装置の開発をサポートすることとなったのです。

カメラをコントローラーに接続するために、より短く軽量なカスタムのCABLINE®-UA IIケーブルアセンブリ40ピンタイプを必要としていました。カスタムハーネスを提供するために、回路図とピン配置を確認し、装置の設置面積を小型化する必要がありました。 I-PEXはこれまでもクライアントのさまざまなカスタムビルドのサポートをしますが、この要求はその中でも最もユニークなものの1つでした。タブレットや携帯電話と同様に革新的で薄型の装置は、データを処理しながら10分の1の重量を達成し、CABLINE®-UA IIコネクタによって接続された高速伝送技術により、カメラは非常に過酷な使用にさらされながら、非常に暗い場所でも動作し、高解析度の映像記録を実現しました。

チームはStevenson博士の支援を受けて、すべてのオーディオとステレオケーブルの変更を含む改造を行ったことで、高解像度カメラと25〜75 kHzのコウモリの「コール」周波数用の超音波マイクを搭載した装置は目標としていたヘッドユニットで10g、バックアタッチメントで40gの重量ベンチマークを達成しました。

鷹の飛行を阻害しないために十分軽量でありながら、大量のデータを安全に記録できるカスタム装置を準備したKloepper博士チームは、ニューメキシコ州のブラジルオヒキコウモリ(Brazilian free-tailed bats)の大きなコロニーに向かいました。そして、飛行中のコウモリ群れの中から非常に詳細なデータを入手することに成功したのです。この貴重な研究データにより、Kloepper博士チームは、コウモリが群れの中でどのようにソナーの干渉を避けているのかをよりよく理解できるようになります。

今回の研究は適切な許可とすべての安全規制が遵守された中で実施され、専門家によって育てられ、訓練された鷹が使用されました。鷹の飛行自体は短く、多くの場合4秒程度で、訓練され餌の報酬によって動機付けられた鷹は、飛行中にコウモリの飛行を阻止しようとせず、また鷹やコウモリが危険にさらされる様なことはありませんでした。

Hawk Cam
高解像度カメラと超音波マイク装置を装備した鷹

その様な中で、使用された軽量装置は、貴重なオーディオとビデオのデータを記録しながら、コウモリの群れを通る鷹による繰り返しの飛行を処理するのに十分なほど堅牢であることが証明されました。さらに、装置と実験により、この研究分野において「ホークカム」という新しい用語が作成されました。

高度な技術装置、技術者、研究者、コウモリ、鷹のそれぞれがうまく機能したことで、今回の試みでは必要な概念実証を達成することができました。チームは質の高いデータを収集し、将来のフィールド調査のために装置を改善する方法を特定することができました。すでに、コウモリが他のコウモリと重ならないように音の特性を変える可能性があるという証拠がいくつか見つかりましたが、結論を出すには、さらに多くの研究と注意深い分析が必要になります。 I-PEXチームも引き続き装置のパフォーマンスをさらに向上させるための協力を行っていきます。

I-PEXに関する情報については「お問い合わせ」ください。

Kloepper博士については、www.laurakloepper.netをご覧ください。