2024年度スパッタリングおよびプラズマプロセス技術部会賞(SP部会賞)を受賞(2025/5/29)

I-PEX Piezo Solutions株式会社(以下 IPS)は、公益社団法人日本表面真空学会が主催するスパッタリングおよびプラズマプロセス技術及びその関連分野の発展に寄与する顕著な業績を表彰することを目的としたSP部会賞において「2024年度SP部会賞」を受賞しました。
受賞者:中川原 修さん、服部 梓さん
業績:多層バッファーを用いたSi 基板上での圧電単結晶薄膜の実用化およびエピタキシャル成長メカニズムの解明
受賞理由
圧電材料として広く用いられているチタン酸ジルコン酸鉛(以下PZT)は、高い圧電特性を有し、周波数フィルタ、センサ、トランスデューサ、共振器など、さまざまなMEMSデバイスに活用されています。
参考:MEMSとは何か
PZTの圧電薄膜性能は、結晶が成長する際の結晶の向き(=結晶配向)に大きく左右されます。特に、電圧をかける方向が、PZTの分極方向と平行、または一定の角度をもって印加された場合に最も強く圧電薄膜性能の効果が発揮されます。
しかし、MEMSに広く用いられるSi基板上に、PZTのような圧電酸化物を優れた結晶性で成膜することは、SiとPZTの結晶構造の整合性が低いことに加え、Si表面に自然に形成される酸化膜(SiO₂)や、界面における元素の拡散などが、成長を阻害する要因となるため、容易ではありませんでした。
IPSでは、独自に開発した多層バッファー層技術により、6インチおよび8インチといった大面積のSi基板上に、原子レベルで均一性を維持した単結晶PZT薄膜の成膜を実現しました。ウエハー面内での結晶方位の整合性、界面構造の制御、薄膜の均質性といった要求を同時に満たすこの技術は、成膜条件の最適化、精密な装置制御、材料設計など、多方面にわたる高度な技術力の融合によって成り立っています。
参考:IPSの成膜技術による単結晶化メカニズム
今回の受賞は、これら多層バッファー層の界面で起こる構造変化を原子レベルの観察技術によって詳細に解析し、連続的に接続した多層ヘテロエピタキシャル成長及び界面形成のメカニズムを明らかにしたことが高く評価されました。
この知見により、従来は実現が困難とされていた異種材料間の接合や、機能性の異なる材料を積層する新たなアプローチが可能になり、今後の高性能・高機能デバイスの開発や、新材料の創出において、基盤技術としての大きな貢献が期待されます。
