MEMS関連用語集

 

MEMSデバイス

MEMS加速度センサ MEMSジャイロセンサ MEMSスピーカー MEMSマイク
MEMS圧力センサ MEMS超音波センサ インクジェットプリンタヘッド RFフィルタ
MEMSオートフォーカス MEMSミラー MEMS光スイッチ MEMSマイクロポンプ
MEMS流量センサ MEMS共振器 MEMS振動発電素子 MEMS匂いセンサ

 

アプリケーション

LiDAR 手ブレ補正 赤外線カメラ 局所真空

 

 

 

MEMS デバイス


MEMS加速度センサ

Acceleration加速度センサは、文字通り加速度(単位時間当たりの速度変化)を検出するセンサです。
微小なバネと重りのような構造が入っています。物体が動いたり加速度が加わると、重りが慣性によって動こうとし、それに引っ張られてバネが伸びたり縮んだりします。この変形の度合いを「静電容量」や「抵抗値」「圧電効果」などの電気的な変化として読み取ることで、センサはどの方向にどのくらいの加速度がかかっているかを計算できます。この動きを検知することで、どの方向にどれくらいの加速度が加わったかを測定します。

たとえば、スマートフォンが落ちると、急激な加速度がかかり、これを加速度センサが感知して動作を止めたり、データを保存したりする機能が働きます。MEMS加速度センサは非常に小さいため、スマートフォン、ゲームコントローラ、ドローン、車のエアバッグシステム、さらには地震計や活動量計など、広い分野で利用されています。MEMS加速度センサは、ジャイロセンサと一緒に使われることも多く、スマートフォンやAR(拡張現実)アプリなどで位置や向きを正確に把握するのに役立っています。

また、加速度センサは「重力加速度」も測ることができます。たとえば、スマートフォンが置かれているときでも、地球の重力(1G=9.8 m/s²)を感じ取ることができ、それを使って上下左右の向きも判断できます。これは、端末の「縦持ち・横持ち」の判別に使われています。

近年では、MEMS加速度センサは非常に高性能かつ安価になっており、IoT機器やウェアラブル端末などでも一般的に使用されるようになっています。
加速度センサにはいくつかの方式がありますが、当社PZTを圧電方式で利用することにより、更なる性能向上が期待できます。

 

トップに戻る


MEMSジャイロセンサ

Gyro sensors「ジャイロ(Gyro)」とは、「角速度(ある軸を中心に回転する速さ)」を測るセンサです。
たとえば、車がカーブを曲がるとき、人はカーブの向きに体が傾きます。このとき、身体は「回転運動」をしています。このように、ある軸を中心として回転する動きを検出するのがジャイロセンサです。
「加速度センサ」は直線的な動きに反応しますが、「ジャイロセンサ」は回転に反応します。たとえば、スマートフォンを持って手首を回すように回転させると、画面がその回転を感知して、カメラやゲーム画面も回転しますが、 これはジャイロセンサの働きによるものです。
ジャイロセンサは角速度を検知し、信号へ変換、その信号を利用して、カーナビの走行軌跡を検出したり、カメラの手振れ補正を行います。MEMSジャイロでは、微小な力の検出において優れた性能を発揮します。高い出力電荷をもった材料を使うことにより、より大きな信号を得ることができます。これにより高精度化が可能となり、更にはより正確な動きのトレースが可能になります。

MEMSジャイロセンサも非常に小さく作られていて、内部には「振動子」と呼ばれる小さな構造体があります。これが一定方向に振動している状態で、物体が回転すると「コリオリの力」という物理現象が働き、振動の方向がわずかに変化します。この変化を電気信号として読み取ることで、センサは「どの方向に」「どれだけ速く」回転したかを検出できます。このようなジャイロ効果を利用する仕組みを、「コリオリ式ジャイロ」と呼びます。

MEMSジャイロセンサは加速度センサと組み合わせて使うことがよくあります。たとえば、スマートフォンやドローンなどの機器は加速度と回転の両方の情報を組み合わせることでどの向きにどれだけ動いているのかを正確に知ることを可能にしています。

 

トップに戻る


MEMSスピーカー

Speaker一般的なスピーカーは、電気信号を磁石とコイルの力で振動に変えて、その振動を空気に伝えることで音を出します。しかし、この方法ではある程度の大きさが必要になりますし、部品も多いため、小型化や省電力には限界があります。MEMSスピーカーは、半導体を使って非常に小さな機械部品と電子回路で構成されており、イヤホンや補聴器のような非常に小さなデバイスにも組み込むことができます。
MEMSスピーカーの最大の特徴は、その小ささと軽さにあります。これにより、イヤホンやスマートウォッチのようなスペースに限りがある機器に組み込むことができるのです。また、エネルギー効率も良く、長時間使用するウェアラブル機器などにも最適です。

MEMSスピーカーの動作の仕組みは、通常のスピーカーとは異なります。コイルや磁石の代わりに、電気の力、特に「静電力」や「圧電効果」を使って膜を振動させます。

たとえば、静電型MEMSスピーカーでは、非常に薄い膜(ダイアフラム)と電極が並んでおり、その間に電圧をかけると、静電気の力で膜が引き寄せられたり戻ったりします。この動きが空気を震わせて、私たちの耳に聞こえる音を作り出します。

また、圧電素子を使った圧電型MEMSスピーカーの場合、振動板部に圧電膜が使用されています。振動板(圧電膜)では電気信号が機械的な振動へと変換され、膜が振動することにより、音が発生します。KRYSTAL Waferの単結晶PZT膜は耐電圧性が高く、変位量も大きいため、従来にはない強い音圧を実現できます。さらに誘電率が低いために消費電力の低減にも寄与します。

最近では、完全ワイヤレスイヤホンなどにMEMSスピーカーが使われ始めており、従来の小型スピーカーよりも音質がクリアで、しかも省電力な製品が増えてきています。また、補聴器のように超小型でありながらも高音質を必要とする分野でも注目されています。今後はスマートグラスやAR/VRのような次世代デバイスでもMEMSスピーカーが使われていくと予想されており、人と機械がより自然にコミュニケーションを取れる未来に貢献する技術となっています。

 

トップに戻る


MEMSマイク

microphonesMEMSマイクは、MEMS技術を使って作られた非常に小さなマイクです。
MEMSマイクは高感度でありながらノイズにも強く、温度や湿度の影響を受けにくいという特長も持っています。これにより、屋外や工場などの過酷な環境でも安定して使用することができます。さらに、MEMSマイクはアナログ出力だけでなく、デジタル出力にも対応しており、AIスピーカーやスマート家電など、音声認識を活用する製品において非常に重要な役割を担っています。また、MEMSマイクは非常にコンパクトであるため、スマートフォンには複数個が搭載されており、それぞれのマイクが拾った音を組み合わせて、特定の方向からの音だけを強調する「ビームフォーミング」という技術にも活用されています。これにより、周囲がうるさい環境でも自分の声だけをクリアに拾うことができ、通話や音声入力の精度が格段に向上しています。

MEMSスピーカーと同様、こちらにも「静電型」や「圧電型」があります。ただし、スピーカーとは逆で、空気中の音が膜を振動させ、そのエネルギーを電気信号に変換しています。

静電型MEMSマイクの基本的な構造は、空気の振動を受けて動く薄い膜(ダイアフラム)と、その動きを検出する固定された電極(バックプレート)によってできています。音が空気中を伝わってきてダイアフラムに当たると、この膜が微かに動きます。この動きによってダイアフラムとバックプレートの間の距離が変わり、その結果として「静電容量」が変化します。この変化を電子回路が読み取り、電気信号として処理します。これが音声信号として出力され、録音や音声認識などに使われるのです。

圧電素子を使った圧電素子を使った圧電型MEMSマイクの場合、振動板部に圧電膜が使用されています。圧電膜が音声を受けると、膜は振動し、圧電膜はその振動を電気信号へと変換します。KRYSTAL Waferの圧電膜の持つ高い圧電特性と低い比誘電率により、大きな出力電荷が期待できます。これにより優れたS/N比を実現でき、微細な音声も検出可能になります。

 

トップに戻る


MEMS圧力センサ

pressure sensors圧力とは、ある面にかかる力のことで、単位面積あたりにどれだけの力がかかっているかを表します。
この圧力を測るために使われるのが圧力センサであり、MEMS圧力センサはその中でも非常に小型で高性能なものです。MEMS圧力センサでは、シリコン材料を使って、薄く小さな膜(ダイアフラム)を作り、この膜が圧力でどれくらい変形するかを測定します。
この変形を測る方法にはいくつかの種類があります。ピエゾ抵抗(拡散)方式ではPZT膜が使用されており、膜が圧力でたわむと電気抵抗が変化を電気信号として読み取ることで、圧力の大きさを計測します。ピエゾ抵抗方式以外にも、静電容量の変化を測る方式や、光を使って変形を測る方式もあります。

MEMS圧力センサの強みは、小さくて軽いだけでなく、製造コストが安く、しかも多くの種類の圧力に対応できることです。
たとえば、自動車のタイヤに内蔵されてタイヤの空気圧を常に監視したり、スマートフォンやスマートウォッチに搭載されて気圧の変化から高度や天気を予測したりします。医療の分野でも、体内の血圧を測るカプセル型センサや、呼吸の圧力を測る装置などに使われています。

 

トップに戻る


MEMS超音波センサ

Ultrasonic sensors人間の耳には聞こえない高い周波数の音である超音波を使って、物の距離を測ったり、物体の形を調べたりできるのが超音波センサです。
超音波センサの基本的な仕組みは、超音波を発信して、それが物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間を測るで周囲の物体を把握するというものです。たとえば、音の速さは空気中ではおよそ毎秒340メートルなので、超音波の反射までの時間を測れば、物体までの距離が正確にわかります。

MEMS超音波センサには、超音波を出す「送信部」と、それを受け取る「受信部」が一体化されています。これを小さなチップ上に作り込むことで、指先に乗るほどの小ささで高精度の距離測定が可能になります。MEMS技術を使うことで、振動する膜をとても薄く、そして均一に作ることができ、安定した超音波の出力や受信ができるのです。

圧電方式の超音波センサではPZT膜などが発信及び受信に利用されます。また、低誘電率な圧電膜を使用することにより、受信側の検出感度の高性能化が可能となり、素子の小型化や高感度化が実現できます。KRYSTAL Waferの圧電膜の持つ高い圧電特性と低い比誘電率により、大きな出力電荷が期待できます。

小型で高性能なMEMS超音波センサは、スマートフォンやドローン、自動運転車、更には医療分野などで活躍しています。
たとえば、スマートフォンでは画面近接センサとして使われ、耳に当てると自動で画面を消す機能などに役立っています。また、ドローンや作業ロボットでは、周囲の障害物を避けるためのセンサとして使われており、空間の中を安全に移動するのに欠かせません。さらに、車の自動駐車機能や障害物検知にも使われており、車が自動的に障害物までの距離を測って停止することができます。

 

トップに戻る


インクジェットプリンタヘッド

Ink-jetインクジェットプリンタは、紙の上に細かいインクの粒を吹き付けて絵や文字を描く印刷機で、この「吹き付ける」動作を行っているのが、プリンタヘッドと呼ばれるインクを紙に噴き出すための部品で、MEMS技術を使って非常に小さく、精密に作られているもので、実はとても高度な仕組みを持っています。

MEMSプリンタヘッドでは、インクを噴き出すためのノズルが非常に小さなサイズでたくさん並んでいます。それぞれのノズルは、直径がわずか数十マイクロメートル、つまり髪の毛よりも細い穴になっていて、そこからインクが吐出されるようになっています。MEMS技術を使うことで、このノズルの形や配置をとても正確に作ることができ、インクを狙った位置に正確に飛ばすことができます。

このインクを押し出す仕組みには、主に2つの方式があります。
1つは熱を使う方法で、ノズルの中にある小さなヒーターでインクを一瞬だけ加熱すると、インクが急に膨張して気泡ができ、それがインクを外へ押し出します。
もう1つは圧電素子(ピエゾ素子)を使う方法で、電気を加えると形が変わる特殊な材料を使って、インクの部屋を押して噴出させます。
KRYSTAL Waferの単結晶PZT膜は変位量が大きく誘電率が低いので、駆動時の発熱を抑えることで回路側への熱負荷を低減できるため高密度化を実現できます。

MEMSインクジェットヘッドは、1秒間に何万回もインクを吐出することができるため、写真のように滑らかで細かい印刷ができるようになっています。また、インクの量や色を微調整できるため、色の再現性も非常に高く、家庭用から業務用の高級プリンタまで、さまざまな分野で使われています。

さらに、このMEMSプリンタヘッドは印刷以外にも応用されています。たとえば、医療やバイオの分野では、液体薬を細かく正確に滴下する装置として使われています。DNAの分析や細胞の観察に必要な液体をほんの少しだけ扱いたい場合、MEMSプリンタのような高精度な液体の制御が役立つのです。

このように、MEMSインクジェットプリンタヘッドは、精密なノズル構造と高速の液体制御という特徴を活かし、ただの印刷機能にとどまらず、科学や医療の分野でも重要な役割を果たしています。とても小さな装置が、大きな技術を支えている代表的な例だと言えます。

 

トップに戻る


RFフィルタ

RF filtersスマートフォンやWi-Fiを使ってインターネットに接続したり、テレビやラジオを受信したりする時に使用する電波は「高周波(Radio Frequency、略してRF)」とも呼ばれ、周波数によって様々な種類があり、たとえばテレビ放送、ラジオ、スマホ、GPS、Wi-Fiなどはそれぞれ異なる周波数を使っています。
このたくさんの電波の中から、必要な信号だけを取り出したり、不要なノイズを取り除いたりするために使われるのが「RFフィルタ」です。これはちょうど、ラジオのチューニング機能のように、特定の放送局の周波数にだけ合わせる仕組みに似ています。
たとえばスマートフォンでは、インターネットに使う4Gや5Gの周波数帯だけを選んで、他の混ざった電波をブロックする必要があります。このような電波の「選別」をするのがRFフィルタの役目です。RFフィルタがなければ、いろいろな電波が混ざってしまって通信がうまくいかなくなったり、ノイズが入ったりしてしまいます。

RFフィルタにはいくつかの種類がありますが、特にスマートフォンのような小型機器では「表面弾性波(SAW)フィルタ」や「バルク音響波(BAW)フィルタ」が使われ、これらのフィルタには圧電膜が使用されています。
これらは、電波を音波に変換して、特定の振動(周波数)だけを通すことでフィルタの役割を果たします。
圧電MEMS技術を用いた新しいRFフィルタでは、さらに小さな構造で高性能なフィルタを作ることが可能になっており、スマホの小型化・高性能化に大きく貢献しています。
これからの時代、5Gや6Gといった次世代の通信が進むと、使われる周波数の帯域も増え、ますます多くのRFフィルタが必要になります。そのため、より小さく、より効率的に電波を選別できる圧電MEMSベースのRFフィルタの開発が進められており、通信技術を支える重要な役割を担っています。

 

トップに戻る


MEMSオートフォーカス

Auto Focusスマートフォンのカメラで写真を撮るとき、自動的にピントが合ってくれる機能を「オートフォーカス」と言います。
このピント合わせの技術は実はとても複雑で、しかも高速で正確に動く必要があります。そこで最近では、「MEMSオートフォーカス」と呼ばれる非常に小型で効率的な技術が注目されています。

オートフォーカスの方法にはいくつかありますが、基本的にはレンズの位置を前後に動かして、光がちょうどよくセンサーに集まる位置に調整する仕組みです。
昔のカメラでは、モーターやコイルを使ってレンズを動かしていましたが、これだとどうしても大きくなりやすく、電力もたくさん使ってしまいます。MEMS技術を使う強みは、微細な構造をシリコン基板の上に作ることで、従来の機械式よりも小さくて軽く、省電力でしかも故障しにくいという点などがあげられます。
MEMSオートフォーカスでは、電気信号を使って非常に小さなアクチュエータ(駆動装置)を動かし、レンズやミラーを前後に移動させます。アクチュエータには、静電力を利用するタイプや熱によって動くタイプまたは圧電素子が使用されているタイプなどがあり、どれも非常に精密で高速な動作が可能です。
レンズの位置を動かす以外の方法にも、レンズ内の流体の形状を変化さることで、光の焦点距離を変化させる方法なども開発されています。

MEMSオートフォーカスは、スマートフォンだけでなく、タブレット、ドローン、さらには工業用の検査カメラや医療機器のカメラにも応用されています。人間の目のように、すばやく正確にピントを合わせることができるため、動きのある被写体でもきれいな画像を撮ることが可能です。

 

トップに戻る


MEMSミラー

MEMS mirrorMEMSミラーとは、非常に小さなミラーを使って光を反射させ、光の向きを変えることができる装置で、電気信号によってほんの数ミリメートル以下という、とても小さな動きを自動で素早く動かすことができます。MEMSミラーはレーザーを高速で別の方向に振ったり、映像を投影したり、光の位置を非常に正確にコントロールする用途などに使用されます。
MEMSミラーの構造は、小さなミラーを微細なバネや軸で支えそこに、「電磁石」や「静電力」「圧電効果」といった方式を用いて、鏡を回転させたり傾けたりします。
これによって、レーザー光やプロジェクターの光を正確な位置に向けることができるのです。このような動作はとても高速で、1秒間に何千回も振動させることもできるため、高解像度の映像を描くこともできます。

MEMSミラーが使われている身近な例としては、LiDAR(ライダー)と呼ばれる技術にもMEMSミラーが使われています。LiDARは、自動運転車やロボットが周囲の環境を「見る」ための目のような役割を果たします。レーザー光を照射して、跳ね返ってくる時間を測ることで、周囲の物体との距離を測定します。このレーザー光の方向を高速で切り替えるために、MEMSミラーが用いられます。MEMSミラーを使えば、小型で軽量なLiDARを作ることができるため、車やドローンに搭載しやすくなります。

また、「DLPプロジェクター」と呼ばれる種類では、多数の小さなMEMSミラーが整列していて、それぞれのミラーがオン・オフのように動いて光の明るさを調整し、画像をスクリーンに映し出しています。この方式はとても高精細で、映画館の映像システムにも使われています。
将来的には、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)といった新しい映像技術の分野でも、MEMSミラーは重要な役割を果たすと期待されています。たとえば、眼鏡のような小型デバイスに映像を映し出すための表示装置に、MEMSミラーが組み込まれることで、軽くて高性能なARグラスが実現されるかもしれません。

このように、MEMSミラーは非常に小さいながらも、高速で正確な動作ができるため、光を自在に操るさまざまな応用に利用されています。日常の映像機器から未来の自動運転技術まで、多くの分野で活躍が広がっている注目のMEMSデバイスの一つです。

 

トップに戻る


MEMS光スイッチ

MEMS光スイッチとは、光通信の中で光の通り道を切り替えるための装置で、MEMS技術を使って非常に小型化されたものです。
現代社会では、インターネットやスマートフォン、テレビなどの通信が光ファイバーを通じて送られていることが多く、その中を走る信号は「光の信号」です。光信号を制御するためには、必要に応じてその光を別のルートに切り替える必要があります。これを人間の手を使わずに自動で行うのが「光スイッチ」の役割です。

普通、電気信号で切り替えるスイッチはたくさんありますが、光通信では「光のまま」信号を切り替えた方が効率が良く、スピードも速いのです。MEMS光スイッチは、微細なミラーや反射板を電気的に動かすことで、光の進む方向を物理的に変えてしまう仕組みです。このスイッチのミラーは非常に小さく、数マイクロメートルというサイズですが、MEMS技術を使えば正確に動かすことができます。光のまま信号を扱えるという点で、電気信号に変換する必要がないため、情報ロスも少なく、速度も非常に速いという利点があります。

BaTiO3結晶やLiNbO3結晶といった圧電体は逆圧電効果とともにポッケルス効果やカー効果といった電気光学効果を利用して、光変調素子に使用されています。
また光スイッチは光通信網の中継点で光信号の経路を変えるマイクロミラーを駆動させる際のアクチュエータとして圧電体が利用されています。

MEMS光スイッチは電気信号でこれらの操作を行うため、非常に高速で切り替えができ、またほとんどエネルギーを消費しないため、特に大規模な通信ネットワークで重要な役割を果たしています。
たとえば、大手のデータセンターや通信基地局では、大量の光ファイバーが張り巡らされています。こうした場所では、トラフィックの状況や障害に応じて、瞬時に光信号の経路を切り替える必要があります。そのため、MEMS光スイッチを使って自動で最適なルートに切り替えることで、通信が常にスムーズに行えるようにしています。

 

トップに戻る


MEMSマイクロポンプ

MEMSマイクロポンプとは、非常に小さなポンプのことで、MEMS技術を使ってマイクロメートル単位の部品で作られたポンプです。
このポンプは、空気や液体をごく少量、精密に送り出すために使われています。普通のポンプと同じく、何かの流体を吸い込んで押し出す役割を持っていますが、その動作をとても小さい装置で実現しているのが特徴です。

MEMSマイクロポンプの基本的な構造は、シリコンやガラスなどの材料でできており、中に小さなチャンバー(部屋)と弁があり、そこを押したり引いたりすることで流体を動かします。この動作は、たとえば静電力や熱、圧力、あるいは超音波などを使って引き起こされます。電気信号を送ることで、薄い膜が上下に動き、流体を一方向に押し出すような仕組みです。圧電膜を使用することで、ダイヤフラム式の超小型ポンプとして利用することができます。小型、軽量化が可能な上、微少量の液体の連続搬送が可能になります。

この技術は医療の分野で特に注目されています。たとえば、インスリンポンプのように、糖尿病の患者さんが体内に一定量の薬を自動で注入できる装置に使われています。また、点滴の速度を正確に制御したり、化学薬品を微量ずつ混ぜるようなラボオンチップ(実験装置を小型化したもの)でも、MEMSマイクロポンプが活躍しています。人の手では扱えないようなごく少量の液体を正確に移動させられることが、大きなメリットなのです。ほかにも、インクジェットプリンタのインクの送り出し、冷却装置の微細な流体制御、小型ドローンの燃料供給など、多くの応用があります。

 

トップに戻る


MEMS流量センサ

水道の水、ガスの供給、血液の流れ、あるいは車の中を流れる燃料や空気など液体や気体が「流れる」という現象がいたるところにあります。これらの流れの速さや量を測るのが流量センサで、MEMS流量センサはその中でも非常に小さく、正確で、反応が速いという特徴を持つものです。

MEMS流量センサは、シリコン基板の中に微細な通路(マイクロチャンネル)を作り、その中を流れる気体や液体の動きを検出します。検出の方法にはいくつかあります。
たとえば、「熱式流量センサ方式」では、流れる通路の一部に加熱素子を設置し、その前後に温度センサを配置します。流体が流れると、熱が流体によって運ばれ、その結果として温度分布が変化します。この温度の変化から流量を計算するのです。
「カルマン渦式流量センサ方式」では、物体を流体が通過する際に発生する「カルマン渦」を圧電素子を使って検出します。

MEMS技術を使うことで、これらの素子やセンサを非常に小さく、しかも精密に作ることができ、流れの微細な変化にもすぐに反応できます。さらに、流量センサの本体がとても小さいため、狭い場所や体内にも組み込むことが可能です。
このようなMEMS流量センサは、医療分野では人工呼吸器や点滴装置などに使われ、患者の呼吸の状態や投与する薬の量を正確に管理するのに役立っています。また、工場ではガスや薬品の流れをリアルタイムで監視したり、自動車では燃料の供給量を管理したりするのに利用されています。また最近では、スマートメーターの中にもMEMS流量センサが使われ始めており、水道やガスの使用量を自動で計測してネットワーク経由で送信するような「スマート社会」の基盤として注目されています。

 

トップに戻る


MEMS共振器

共振器とは、特定の周波数で「共振」という現象を起こす装置のことで、MEMS共振器はその現象をとても小さな構造で実現するものです。
共振とは、ある周波数の波がその物体の固有の振動とぴったり合ったときに、大きく振動する現象のことを指します。たとえば、ブランコを一定のタイミングで押すとどんどん高くなるのが共振の一例です。
MEMS共振器では、シリコンの小さな梁や板が作られており、それを電気的に振動させることで特定の周波数の共振を起こします。これを使って、時間を測る「発振器」や、信号を安定させる「フィルタ」、周波数を基準にする「周波数標準」として活用します。従来は水晶を使った「水晶発振器」が使われていましたが、MEMS共振器はそれよりも小型で、しかも製造がしやすいという利点があります。

MEMS共振器の魅力は、高精度で温度変化にも強く、しかも微小な構造でありながら非常に安定した周波数を出せるところです。
スマートフォンやGPS機器の中には、正確な時間や周波数を保つための発振器が必要ですが、MEMS共振器はそれをわずか数ミリ以下のサイズで実現できます。
圧電素子を使用した共振器は通信分野などで利用され、圧電薄膜共振器(FBAR)技術として知られています。

 

トップに戻る


MEMS振動発電素子

MEMS振動発電素子とは、エナジーハーベスト技術と呼ばれるものの一種で、周囲の振動や揺れを使って電気をつくる非常に小さな装置です。
基本的な仕組みとしては、中にバネのような構造で支えられたおもりが入っていて、それが振動によって動くことでその動きによって圧電素子と呼ばれる材料が変形し、電圧が発生するという仕組みです。
このようにして作られた電気は、たとえばセンサを動かしたり、信号を送ったりするのに使うことができます。

MEMS振動発電素子は、電池を使わずに動くための「小さな発電機」として注目されています。
特に、電池を交換できないような場所や、小さなセンサがたくさんあるシステムでは、このMEMS振動発電素子はとても便利です。たとえば橋やビル、機械の中などに設置されたセンサが、構造のゆがみや振動を感知して、その振動自体で発電しながら自分で動き続けることができるのです。

また、ウェアラブルデバイスやスマートウォッチなどに応用される可能性もあります。たとえば、身に着けたカバンや服伝わる小さな振動を利用して電気を作るのです。人が動くたびに発生する微小な振動を使って電気を作れば、充電を不要とするスマートデバイスが実現できるかもしれません。

さらに環境に優しいという利点もあります。使い捨て電池を減らせることで、廃棄物が減り、環境負荷も小さくなります。このような「自己発電型センサシステム」は、これからの持続可能な社会にとってとても重要な技術になっていくでしょう。MEMS振動発電素子は、小さな力を無駄にせず、必要な電力に変える賢いエネルギー変換装置として、今後さまざまな場所での活用が期待されています。

 

トップに戻る


MEMS匂いセンサ

MEMS匂いセンサとは、人間の鼻のように空気中のにおいの分子を感じ取って、それを電気信号に変えるセンサのことで、MEMS技術によって小型で高性能に作られています。
匂いというのは、実は空気の中に含まれるごくわずかな化学物質(ガス)によって感じるものです。人間の鼻はこれを感知して「甘い」「くさい」などと判断していますが、MEMS匂いセンサはその働きを機械で再現しようとするものです。
圧電方式の匂いセンサの場合、匂い分子に反応する感応膜を塗布した圧電膜を振動させることにより、感応膜に匂い分子が付着した際に生じる、圧電膜の共振周波数の僅かな変化を検出します。
KRYSTAL Waferの圧電膜の低損失、高変位量といった特性により、共振周波数のピークをより明確化することができるため、周波数変化の分解能向上につながり、検出感度の高性能化に貢献します。

MEMS匂いセンサは、食品の鮮度チェックやガス漏れの検知、健康診断など、さまざまな分野で使われることが期待されています。
たとえば冷蔵庫にこのセンサをつけておけば、中の食材が傷んできたときに匂いの変化を検知してアラームを出したり、呼気に含まれる成分を測定して、病気の兆候を早期に見つける医療用途への応用も研究されています。

最近では、AIと組み合わせて匂いのパターンを学習させることで、より正確な分析ができるようになってきています。つまり、機械が匂いを「嗅いで」「記憶し」「判断する」という、人間に似た働きをするようになってきているのです。このように、MEMS匂いセンサは人間の五感の一つを機械で実現しようとする挑戦的な技術であり、小さなセンサが人間に代わって「匂いを感じる」という、新しい可能性を広げてくれるデバイスと言えます。

 

トップに戻る


 

 

アプリケーション


LiDAR

LiDARLiDARとは、Light Detection and Rangingの略であり、レーザー光を用いて検知と距離の測定を行う技術です。自動運転においては特に重要とされる技術ですが、最近は携帯端末にも搭載されるようになり、より幅広く利用されるようになってきました。

製品用途
自動車の自動運転、高度運転支援システムなど

 

トップに戻る


手ブレ補正

shake preventionデジタルカメラ向けの手振れ補正機構といった位置制御デバイスには、圧電体が使用されています。

製品用途
デジタルカメラ

 

トップに戻る


赤外線カメラ

Infrared camera焦電型赤外線センサにおいては、焦電セラミクスの焦電効果を利用して、赤外線の検出を可能にします。圧電体の自発分極を利用しており、赤外線が入射することによって温度変化が生じると、焦電係数に比例した電荷が受光部分に発生します。この電荷は直ぐに中和されますが、この時瞬間的に発生する電圧を検出します。

 

 

トップに戻る


局所真空

pressure sensorsPZT膜を使った実現可能な近未来技術として、「局所真空」と呼ばれる技術が期待されています。例えばロボットアームの先端に低真空を作り出すマイクロポンプを装着することによって、物体を把持できますが、このマイクロポンプの駆動にPZT膜の圧電性が活躍します。PZT膜を使用することにより、駆動に必要な配線が電源ケーブルのみになり、非常にシンプルなデザインが可能となります。

製品用途
産業用ロボットアーム

トップに戻る