「つながるクルマ」とI-PEXの小型RFコネクタ MHF® I LK

IoTや5Gなどの通信技術の発展とともに、今後も自動車のデジタル化やネットワーキング化が進み、移動する車両に無線通信機能を備えた機器を搭載することで、各種情報を送受信するシステムを利用したテレマティクス開発や、無線通信機能を備えた統合インテリジェントコックピット、ヘッドユニットなどのインフォテイメント開発はさらに活発になっています。

つながるクルマ
「つながるクルマ」を実現するテレマティックスとインフォテイメント技術のイメージ

 

一般的な民生製品に比べ車の寿命は長く、高速走行時や悪路走行時には多くの振動や衝撃が発生します。そのため、車載に使用されるコネクタには、振動や衝撃環境でも安定した信号伝送を可能にする必要があり、高い耐振動性能と耐衝撃性能が求められます。

news_mhf-i-lk_1.pngMHF® I LKコネクタプラグは、特許を取得したメカニカルロック機能により同カテゴリーの一般的な小型RFコネクタと比べコネクタの嵌合保持力を大幅に向上させた、振動や衝撃に強い製品となっています。信号の接続信頼性を高める製品として、特に振動や衝撃が予想されるアプリケーション向けに採用が広がっており、今回はその中でも車載アプリケーションに採用された事例をご紹介いたします。

 

 

車載T-BOX(テレマティックスボックス)への採用事例


T-BOX(Telematics-BOX)とは、テレマティクス制御ユニット(TCU)とも呼ばれ、「つながるクルマ」技術を実現する端末として、GPS衛星測位やインターネットやクラウドIoT、V2Xなどへのワイヤレス通信の他、車両のリモートモニタリング、リモートコントロール、安全性のモニタリングと警告など複数のオンラインアプリケーションの提供を可能にします。I-PEXのメカニカルロック付き小型RFコネクタMHF® I LKは、多数の車載用アンテナ製品にも採用されており、その内の1つであるシャークフィンアンテナ用コネクタとしてT-BOX製品に搭載された経緯について車載製品メーカーの設計技術者にお話しを伺いました。

60年以上の歴史のある大手車載製品メーカー。設計する車載アンテナ製品には、シャークフィンアンテナ、平板アンテナなどを含むWi-Fi、ルーター、CPE、スマートエンタープライズネットワーク、スマートホーム、LTアンテナなどの通信アンテナなど。カーアンテナ製品に多数のI-PEX小型RFコネクタであるMHF®シリーズを採用いただいており、MHF® I LKはT-BOXのGPS、V2X、およびWi-Fi信号の接続用コネクタとして使用されています。

T-BOX
車載シャークフィンアンテナとT-BOXの接続イメージ

 

技術開発部の技術責任者によると、同社のT-BOX製品にはMHF® I LKコネクタを4個採用しており、その内の1つはローバージョンアンテナ用としてGPS信号を接続するコネクタとして使用されており、ハイバージョンアンテナとして使用されている3個の内の2個は車の前後に配置された自動運転を行うV2X機器の信号接続するコネクタとして、残りの1つはWi-Fi信号用のコネクタとして使用されます。これらのアンテナは、外部接続タイプである一般的な独立したシャークフィンアンテナではなく、BOXの内側にあるため、アンテナケーブルのMHF® I LKコネクタは基板上のレセプタクルに直接接続されています。BOX内のスペースは非常に限られているため、小型にも関わらず高い接続信頼性を持つMHF® I LKによる接続がこの製品に適していると考えています。

構造技術部の技術責任者は、「我々のT-BOXとアンテナは非常に小型で、ボックス内のスペースが限られていますが、I-PEXのMHF® I LKはこの狭いスペースで非常に優れた耐振動性能を発揮しています。」とコメントしています。車載アプリケーションには、非常に高い耐振動機能が求められます。当初、メカニカルロック機能を持たない一般的な小型RFコネクタを使用していましが、振動を加えた後にコネクタが脱落してしまう可能性がありました。製品開発の初期段階ではコネクタを嵌合させた後に接着剤で固定して解決しようとしましたが、接着剤で固定してしまうとメンテナンスの際などの必要な時にプラグを外すことが困難になるため利便性に懸念が発生してしまいます。そのためメカニカルロック機能を備えたMHF® I LKの検討を開始。構造技術部の技術責任者によると、MHF® I LKは同社の評価で6G振動試験にも合格し、採用を決定したそうです。

 

車載ヘッドユニットへの採用事例


I-PEX MHF® I LKが採用されている車載ヘッドユニットは車両のメインコントローラーとして、車両のハードウェアおよびインフォテインメントシステムのHD信号を伝送するために使用されています。 このユニットは人と車載コンピューターの中継役としてカーインフォテインメントシステムを一元コントロールし、照明、エアコンとステレオ、運転支援システム、360度カメラ、顔・音声の認識などを統合しています。MHF® I LKコネクタは、このヘッドユニットにおいてはメインアンテナ信号、無線放送、およびBluetoothなどの無線信号を接続する目的で、ワイドボディ中央制御ディスプレイの背面にあるマザーボードとアンテナモジュールを接続するコネクタとして採用されています。

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車載ヘッドユニットアプリケーションイメージ

 

 

MHF® I LK 小型RFコネクタ


メカニカルロック時のMHF® I LKは、追加のメカニカルロック機能を持たない一般的なフリクションロックタイプの小型RFコネクタMHF® Iコネクタと比較した場合、初期嵌合保持力が約2倍に達します。またメカニカルロックを解除した状態でMHF® I LKの挿抜を30回の行った後、メカニカルロックをした場合の嵌合保持力はMHF® Iコネクタの約3倍という結果がでています。このような高い保持力により、MHF® I LKは、小型にも関わらず走行時の衝撃と振動の下でも高い信号の接続信頼性を確保することが可能になっています。

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嵌合保持力の比較

このようなMHF® I LKコネクタの高い嵌合保持力と接続信頼性により、嵌合したコネクタを固定するために追加テープ工程や接着剤による固定工程、または再度抜去が必要な場合の固定材の除去工程などの削減が可能となり、生産ラインでの組み立て効率を向上と製品の製造コストの削減が期待できます。

 

ロック・ロック解除作業とロックの状態確認


また、ロックカバーを前後にスライドさせるシンプルでわかりやすいワンアクションにより簡単にロックとロック解除を行うことが可能で、ロックの状態を目視で確認できるCheck windowが備わっていることから、取り扱い時のロックの確実性を高め、製品の検査やメンテナンス時などプラグを抜去する必要がある場合でも容易にロックの解除と、再ロックの作業を行うことが可能です。

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ロック、ロック解除作業とロックの状態確認イメージ

IoTや5Gなどの通信技術の発展とともに、今後も自動車のデジタル化やネットワーキング化が進み無線通信機能を備えた統合インテリジェントコックピットやヘッドユニットなどの開発はさらに活発になっています。MHF® I LKコネクタは、このような無線通信機器において安定した嵌合状態を確保する必要のあるデバイスに最適な製品として、お客様の生産ラインのサプライヤーや品質エンジニアなどからも高い評価を得て採用をいただいています。

 

I-PEXのメカニカルロック機能付き小型RFコネクタ


I-PEXの小型RFコネクタには他にもメカニカルロック機能を備えた製品があります。

  • MHF® 4L LK:  周波数帯域: Up to 12 GHz、
    RF同軸ケーブルサイズ AWG 30 (O.D. 1.37 mm)
  • MHF®-TI: 80N min.の高嵌合保持力、
    RF同軸ケーブルサイズ AWG #24 (O.D. 3.00 mm), AWG #26 (O.D. 2.40 mm)

 

動画


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動画:MHF® I LK

 

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動画:MHF® I LK挿抜方法